Kitchen LAB&BAR/キッチンが俺の研究所であり、バルである

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日本独自の料理カレー、その秘密はカレー粉にあり

日本オリジナルのカレーはカレー粉が生んだ

カレー粉を使うのが、日本のカレーの特徴

“カレー”は日本人に人気の高い料理の一つです。一昔前までは子供向けの料理とされていたが、現在では、その風味は幅広い年齢層に好まれていて、カレーライスだけでなく、カレー風味の料理も多く作られています。


日本ではカレーが広く普及し、これだけの人気料理となったのは、インドから伝播したカレーが日本独自に進化していったためです。その進化の源になったのがカレー粉です。


カレー粉はイギリスで生まれた配合の香辛料ですが、現在イギリスではほとんど使われていません。ところが日本においては今やキッチンには不可欠な香辛料の地位を確立しています。

カレーは、ご存知のようにインドからイギリスを経て日本に伝わった料理です。ところが、日本で親しまれているカレーは、インドのカレーは全く違った料理となってしまっています。

その大きな違いの一つが、“カレー粉”です。

日本人は、インドや東南アジアなどカレー料理のあるところには、カレー粉が存在すると考えがちですが、これは日本的な発想のようです。こうした国々にはカレー粉というものは、基本的には存在しません。


インドであれば、タイであれ、カレーを作るときは、多種類の香辛料を調理人が独自に配合します、そして、自分の味のカレーを生み出すのです。


ちなみにインドでは、カレーに使用する香辛料類は、そのほとんどが薬として考えられます。そのため、香辛料の配合は、とても大切な仕事で、家族の健康を保つために工夫を凝らすのです。


だからそうした国の人々にとっては、香辛料の配合という最も大切な部分を人任せにしてカレー粉に頼るということは、とうてい考えられないのです。

日本にカレーが入ってきた由来とカレー粉の誕生

カレー粉という便利な食品が生まれたのは18世紀のイギリスです。それより以前に、多種類の香辛料を使うインド料理の“カリー”がイギリスに伝えられたのですが、使用する香辛料の数があまりに多いため、より簡単に作ることができるように工夫した結果、カレー粉が誕生したのです。

イギリスのカレー粉に日本へ入ってきたのは、明治の初め頃、そして、日本で最初にカレー粉を作って売り出したのは大阪の薬問屋で、明治36年のことでありました。この時代あたりから、日本でカレーライスが広く食べられ、日本人の嗜好に合うよう工夫されてきたわけです。


そして、カレー粉は、日本人の食生活に欠かせないものとなり、中国風、洋風、和風と幅広い料理に調和する便利な香辛料となって、今では広く利用されているわけです。

カレー粉の配合香辛料が日本で多用されるのはなぜか?

カレー粉という配合香辛料がなぜ日本でこれだけもてはやされるのかを考えると、一つには日本人は香辛料を混ぜ合わせて使う習慣がなかったことが考えられます。


日本で古くから用いられる香辛料には、ワサビ、山椒、ショウガなどがありますが、これらはほとんどが単独で使われるからです。


次に考えられるのは、「皆と同じだと安心する」という日本人の性格によるものです。自分で香辛料を配合してオリジナルの風味を作り出すより、誰かが配合して、すでに一定の評価を得ているものを使う方が安心だという心理です。


和風の配合香辛料の七味唐辛子を例にとってもわかるように、これを自分でブレンドする人はめったにいません。ゴマが多い方が良いとか、唐辛子が効いている方が良いとはいった好みはあるようですが、たいていは製造者にお任せです。


そして、いろんな製品の中から自分の好みに合う銘柄を探し出して使う傾向にあるようです。カレー粉も同じように製品化されたものを買うのが当たり前となっています。

ウスターソースもカレー粉と同じ配合香辛料の一つ

日本人がいかに配合香辛料が好きかということは、ウスターソースを例に挙げてもよくわかります。ウスターソースは、カレー粉同様、イギリスで開発されたソースだが、テーブルソースとしてこれだけ重宝が使っているのは日本だけのようです。


ウスターソースは、香辛料をはじめ、調味料、野菜などを多種の材料を配合したソースだが、アミノ酸という日本人好みの旨味を持つため、多用されるのでしょう。焼きそば、タコ焼き、お好み焼き、トンカツ、揚げ物・・・などとウスターソースの味で食べる料理はかなり多いのです。


カレー粉にしてもウスターソースにしても、その魅力は数多くの香辛料を上手く配合している点にあるのですが、その中には“核”となるような風味が隠されているようです。


カレー粉の場合、“核”として二つの代表的な香辛料が挙げられます。


一つは、カレー粉の特徴である黄金色を出すのに欠かせない“ターメリック”です。ターメリックは、インドでは高貴な香辛料とされ、祭りのときなどのハレの日に、必ず用いられる用です。辛味はなく、独特の風味を持っています。


もう一つは、カレーらしさを香りの面から出す“クミン”です。単独で用いると薬臭の強い香辛料なので、日本人には馴染みにくいですが、カレー粉として配合されると良い風味となり、日本人にも受け入れられるようになるようです。

カレー粉の風味は和風にも合う

カレーパン、カレー肉まん、カレーうどん、カレーピラフ、カレーコロッケと、カレー味の食品を挙げると際限がないが、これはカレー風味が幅広い料理に適応するからです。


もちろん、カレー粉の風味は和風調味料にもよく合います。淡白な和風料理に合わせるわけだから、うっすらと風味づけ程度に使用することがポイントとなります。特に、生臭みを持つ食品の臭い消しや、風味にアクセントの少ない料理に使うと効果が高いのです。


生魚の和え物、卵黄を使う黄金焼き、てんぷらの衣などはその一例ですが、この他、工夫次第で色々な和風の料理に使うことができます。



カレーは日本人にはイメージの良い食品

カレーが日本でこれだけもてはやされるのは、風味が良いことはもちろんですが、実はイメージ的な要因も大きく関係しています。


子供のときに、カレーライスを“楽しいことご馳走”と感じた人は多いはずです。今も昔も、子供にとってカレーライスが親しみのあるご馳走という点では変わりはありません。子供のころこうした経験は、成長してからも嗜好の上で非常に重要なものとなります。子供のときに良い印象を感じた食べ物は、親しみやすい風味として意識的に刷り込まれています。


つまり、カレーをご馳走として育った人にとって、カレーは「安定食品」の役割を果たします。「安定食品」というのは、分かりやすく言えば、“おふくろ味”のようなものです。


幼少のころから馴染んだ懐かしい味のものを食べると、ほっとして気分が落ち着くのが、これは子供のときに経験した楽しい風味が心理に固定されているからなのです。


現在、カレーが日本人にとって非常に好まれる味となっているのは、「安定食品」という側面が大きいからとも言えます。カレーの風味を上手く利用すれば、その利用を好ましい味として受け入れられる人が多数存在することは確かです。


カレー粉という便利な食品を、幅広い調理に、うまく使いこなすことができれば、多くの人に支持される料理を作り出すことは意外とためやすいことと言えます。