Kitchen LAB&BAR/キッチンが俺の研究所であり、バルである

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ホウレンソウの栄養を損ねない理想の茹で方

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photo by I Believe I Can Fry

ホウレンソウはとても栄養価の高い緑黄色野菜

ポパイは恋人のオリーブが危険にさらされると、颯爽と駆けつけ悪漢からオリーブを救い出す、昔のアメリカ漫画のヒーローです。


ポパイはホウレンソウを食べると、あっという間に筋肉マッチョになって、オリーブをさらった悪漢を軽く蹴散らしてしまう、痛快さが面白い漫画です。

となれば、ホウレンソウはアメリカが原産地なのかと思いきや、実はペルシャ(今のイラン)辺りになります。ホウレンソウは、ペルシャからシルクロードを通って中国に渡り、バウリン草(バウリンとは昔のペルシャの意味)と呼ばれました。

中国では主に華北での栽培が盛んで、多くの品種に分化され、その一部が日本にホウレンソウとして江戸時代の長崎に伝わって来ました。

これは現在も在来種として呼ばれる大葉で茎が赤いもので、アクが少なく甘みが強いので、茹でてそのまま食べる『おひたし』で庶民に愛されていました。


現代では、見た目が良く、収穫量の多い西洋種や、在来種と西洋種が交配して作られた中間種が、ホウレンソウとして市場に広まっています。

西洋種は肉厚で葉が丸く、ややアクが強く、おひたしではなく、炒め物やグラタンなどに向いています。


ポパイがなぜホウレンソウ好きかと言うと、肉食中心のアメリカで、子供達に肉ばかりではなく、野菜も食べないと丈夫な体を作ることができないと教えるため、という説があります。ホウレンソウとトウモロコシの炒め物がポパイソテーと呼ばれるのはそのためです。


そう、ホウレンソウはとても栄養価が高く、ビタミン類、鉄、カルシウム、食物繊維をバランスよく含む優秀な緑黄色野菜です。


緑黄色野菜の正しい定義はご存知でしょうか?なんとなく、名前だけで緑や黄色などの色がある野菜だと思ってしまいませんか?


しかし、厚生労働省によって緑黄色野菜の定義が決められており、『新鮮な野菜100g中にβカロテンを600μg以上含むもの』とされています。


ホウレンソウはβカロテンを100g中に生の状態で3100μg、茹でた状態で3600μgも含まれる、最も優秀な野菜の一つになります。

ホウレンソウに含まれるβカロテンとは

では、次にβカロテンとは、いったいどんな栄養素なのだろうか?


最近よく、健康食品の話題で取り上げられるβカロテンは植物だけに含まれる黄、赤、緑、橙色の色素で体内に含まれるとビタミンAに変化するものと変化しないものに分かれます。


ビタミンAが不足すると、視力の低下、目のかゆみ、肌荒れ、食欲減退、風邪になりやすいといった症状が現れます。


食べてもビタミンAに変換されないβカロテンには、抗酸化作用があり、活性酸素の害を防いで癌などを予防するとして注目を浴びています。

ホウレンソウをたかが葉っぱとあなどることなかれ。ホウレンソウはやはりポパイの素が詰まった野菜です。




ホウレンソウの栄養を最大限に活かす茹で方

ホウレンソウの魅力は、豊富な栄養素ばかりではありません。青葉の素朴な味わいや、綺麗な緑色をしていることも挙げられます。


ホウレンソウを茹でるときは、①鍋の蓋を外す、②沸騰した湯に入れる、③塩をひとつまみ入れる、④さっとゆがく、⑤すぐに水で洗う、の順で行うのが好ましいです。


ホウレンソウはシュウ酸という苦味の素になる物質が含まれていますが、シュウ酸は水蒸気と一緒に失われるので、ホウレンソウを茹でるときは鍋の蓋を外して、このシュウ酸を逃してやる方がいいのです。


また、ホウレンソウに含まれている緑色の素は、クロロフィルという葉緑素このクロロフィルは、長く加熱すると褐色のフェオフィチンという物質に変化して退色してしまいます。


茹ですぎたり、茹でた後すぐに水洗いして冷やさないと、どんどん余熱が回って色が褪せてしまうので注意が必要です。


ただし、ホウレンソウに含まれているビタミンCは水溶性なので、あまり水に長くさらしてしまっては、ビタミンCを逃してしまいます。洗った後水に浸けっぱなしにするのは避けた方がいいでしょう。


これは他の青葉についても当てはまります。ホウレンソウの他にも、小松菜、春菊などは水から茹でることはせずに、沸騰した茹でた後に水に少々さらすのは、熱を持っている時間を少しでも短くすることで、色褪せやビタミンの流出を防ぐ為です。


また、茹でるときに塩をひとつまみ入れておくと、クロロフィルの分子の一部が食塩のナトリウムイオンと部分的に置き換えられて、より安定した形になるために一酸化酵素を抑えてくれます。

では、大根やゴボウなどの根菜も、青葉と同じように沸騰した湯で茹でた方がいいのでしょうか?答えは否で、土の中で育つ野菜の多くは水から茹でるのが正解。


昔から『土の上で育つ野菜は水から、土から育つ野菜は湯から茹でる』と言われており、繊維が多く固い根菜は、ゆっくりと時間をかけて茹でた方が柔らかく仕上がり、調味料も染み込みやすくなるからです。