里芋は「ぬめり」が厄介
里芋にある「ぬめり」は、煮汁に含まれる空気を膨張させて吹きこぼれをおこしたり、熱の周りを悪くしたり、調味料を通りにくくしてしまい、里芋を調理するときはこの「ぬめり」に気を遣わなければなりません。
このぬめりを取るために、塩でもんだり、茹でこぼし(一度食材を水から煮て、煮汁を捨てること)をするなど、下ごしらえをするのが一般的です。
里芋の品種
里芋は、大きく4つの品種に分類されます。
一つは親専用種で、「真イモ」や「旬イモ」と呼ばれるものです。
二つ目は親子兼用種である「八ツ頭」や「セレベス」が知られています。一つのイモからたくさんの芽を出す「八ツ頭」は、芽出度い(めでたい)として縁起が良いとされ、お正月やお祝い膳などのおめでたい料理に欠かせないものとなっています。また、世間に出たら八人の頭になるようにという願いも込められているそうです。
三つめは小芋用種。一般に里芋として出回っている種であり、「土垂」「石川早生」が有名です。小芋で作る料理の代表格と言えば、やはり「きぬかつぎ」ですか。「きぬかつぎ」という名前は、小芋の皮が被った姿を平安時代の女性の装束姿「衣被」になぞらえてつけられたと言われています。ちなみに里芋の中でも、秋一番に出回るのは「石川早生」で、お月見に供えられるのは、この小芋です。
最後は葉柄用品種で、ハスイモと呼ばれるものです。これは「ズイキ」といって葉柄を食べるもので、厳密には里芋とは別の品種になります。ズイキを乾燥させたものが、酢のものや瀧早生の「イモがら」です。
里芋のかゆみの原因と対処
里芋を触ったときに生じるかゆみは、山芋と同じでシュウ酸カルシウムが原因です。対処方法として、ペーパータオルや布巾で押さえながら皮を剥くなど、できるだけ液汁が手につかないようにするのがベスト。
手袋をして包丁を持つのは、手元が狂いやすく危険なので避けた方が良いでしょう。
多少風味が変わってしまいますが、シュウ酸カルシウムは酢に弱いので、里芋をさっと酢水に浸けてから調理をするのも良いでしょう。
里芋のぬめりの原因とその対処
そして、かゆみよりさらに厄介なのが、里芋のぬめりです。ぬめりを取るには、一般的には里芋を塩でもんでから煮たり、塩水または妙晩翠で茹でこぼすのがよいと言われています。
里芋を塩でもんだり塩水で茹でたりすると、粘物質が凝固するため、ぬめりを感じにくくなります。ミョウバン水で茹でると、粘物質が茹で汁の中に溶けだすのを防いでくれるため、吹きこぼれが起きにくくなります。そればかりか里芋を白く茹でてくれる効果もあるのですが、残念ながら風味を少しだけ落としてしまうのが欠点です。
しかし、「里芋のぬめりは厄介」とばかりに取り除いてしまってよいのでしょうか。
実は里芋のぬめりの主成分は、ガラクタンという食物繊維とムチンという消化酵素で、体に良い有効成分一種です。
また、里芋の持つ独特の香りや滑らかでむっちりした舌触りのもとになっているので、そんなに神経質に取り除かなくても良いのかもしれません。
下ごしらえをすれば、旨味や栄養分が減ってしまうし、下ごしらえをせずに調理をするのは難しい。どちらが良いというのは一概に言えないとこですが、栄養面を重視したいとき、見栄えを重視したいとき、ケース・バイ・ケースで加減してはいかがでしょうか