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ミルクの泡に隠れた科学~自分で美味しいカプチーノの泡を作りたい~

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カプチーノの泡って

ちょっと気分がええときには、喫茶店でカプチーノを頼んでいるときがあります。カプチーノの上にちょんと乗っている泡っていつも立派やなぁって、バリスタの方の技術に思わず感心してしまうことがあります。


カプチーノとは、エスプレッソに蒸気処理して泡立てたミルクをのせる飲みものですけど、自分の家で作ってみようとしたことってありませんか?試したことがある人ならば、分かってくれると思いますが、当たり前に出てくるミルクの泡って、ミルクほどよく泡立てることってめっちゃ繊細な技術。


本格的なカプチーノを作るためには、きちんとした方法でミルクを泡立てることが不可欠なわけです。。この本格的なカプチーノというのは、甘くて芳醇な風味をもったミルクの泡をカップに注いでもすぐにカップ内で消えたりはしないのです。そして、ミルクの泡の組成と泡立てさせ方が、最終的に飲む人が感じる泡の質を決定します。


美味しいカプチーノの泡の秘密、それはミルクの泡立て方に特別な工程があります。ミルクの泡立てには、まずだいたい4℃くらいの冷たいミルクに蒸気を急速に注入することが肝心であると言われています。この蒸気と冷たいミルクを急速に混合することが、泡のもとになる気泡を形成します。

また、ミルクの種類も重要な要素になります。泡立てが簡単なのは無脂肪乳や部分脱脂乳で、一方で、全乳は泡立たせることが難しい。ただし、美味しいカプチーノは全乳の泡が使われています。よりクリーミーな味わいで美味しくなるからです。

理想的なカプチーノの泡を作るためには、泡立ての工程中でいくつかの大切な物理的および化学的な根拠があります。

泡の形成

そもそも泡というのは、液体中に気泡が混合している状態として定義されています。目にしたことがあると思いますが、水中に気体を単純に分散させただけでは安定した泡は形成されません。むしろ、ぱっとすぐに消えてしまう寿命が短い泡が形成されます。

すぐに消えてしまう泡は、最初は小さな気泡でも急速に合体して大きな気泡になってしまい、泡の膜が支えきれずに崩壊するためです。そのため、理想的なカプチーノ泡には、泡が合体することを防ぎ、泡を取り巻く保護層が必要になります。

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この保護層を形成する分子は、気泡の表面に向かって活発に移動し、そこに留まります。科学者たちは、これらの分子を表面活性剤または界面活性剤と呼んでいます。食器用の洗剤が泡立つのはこの界面活性剤がたくさん入っているからです。


カプチーノの泡の中で界面活性剤の役割を果たすのは、ミルク中に含まれているタンパク質です。このタンパク質の次の3つの特徴がカプチーノの泡を形成し、安定化させるために重要な要素となります。

・空気とミルクの界面にすばやく付着し、気泡の周りに層を形成する能力
・空気とミルクの界面に留まる能力
・空気とミルクの界面での弾性ネットワークを形成する能力

例えば、カプチーノの泡は、機械的攪拌、蒸気注入、空気バブリングといった様々な方法で作られます。いずれの場合でも、空気とミルクの間に界面領域が形成されます。

ミルクが泡立てられ、新しく生じた気泡を保護するため、タンパク質が空気とミルクの界面へ付着していくわけですが、このタンパク質の吸着速度が泡の形成を決定づける主な要因となります。

この吸着速度は、タンパク質の大きさなどの性質で変わります。より小さなサイズのタンパク質は、空気とミルクの界面へとミルクの中を迅速に移動できるため、吸着速度がより速くなります。


また、そのタンパク質が空気とミルクの界面に留まったり、気泡の周りに弾性ネットワークを形成したりする能力は、泡立てたときに起こるタンパク質構造の変化や程度によって決定されます。

そして、タンパク質の特性の他に、ミルク(液体)での空気(気体)の溶解度も重要です。気体が液体中に溶けやすいほど、より多くの気体が液体に溶け込んでいくことができて、気泡を形成する能力がより大きくなります。泡を形成するためには空気のミルクへの溶けやすさが深く関与しています。

泡の安定性

ビールやカプチーノの上を覆う気泡は、液体とそれに囲まれた空気だけです。液体の体積を一定に保っている間は、泡の体積を大きくすればするほど、気泡を取り囲む層は薄くなります。


液体が増加してしまった体積に対応するために広がっていく必要があるわけです。当然、液体は気体よりも重いので、液体は泡から流れ落ちてしまいます。

しかし、液体が濃ければ濃いほど、流れ落ちる速さはゆっくりとなり、見かけの泡の安定化に役立ちます。泡から液体が簡単に流れ落ちてしまうと、気泡間の薄い膜がさらにより薄くなるため、気泡同士がより近づくようになります。その膜が薄くなればなるほど、自然と弾けるシャボン玉の膜のように破裂する可能性が高くなります。


泡から液体が流れ落ちるほかに、泡内での気体の移動も泡の安定性に影響を与えます。


不思議なことに、気体は小さな泡から大きな泡へと移動する傾向があります。そのため、小さな気泡はますます小さくなり、大きなものはより大きな泡へと成長していきます。この現象は一般的に不均化と呼ばれています。


大きな気泡は小さいものよりも脆弱であるため、不均化は泡の安定性を低下させてしまいます。液体への溶解度が低い気体は、不均化が生じる速度を著しく低下させるため、溶解しやすい気体よりも安定した泡を形成します。

この現象は、ビールでも同じように見られます。ギネスビールの泡は、他のビールの泡よりも消えにくいって感じたことはありませんか?それが濃厚で芳醇な香りを演出しているわけですが、これはギネスビールの泡に含まれている気泡が、一般的なビールで使われている二酸化炭素ではななく、窒素によって形成されているためです。窒素は二酸化炭素よりも水に溶けにくいので、泡が安定しているのです。



カプチーノの泡に話は戻って、タンパク質のような界面活性剤は、泡の安定性に重要な役割を果たしています。例えば、人がビールを飲むときやカプチーノへ泡を注ぐとき、泡はあちこちに動くため、気泡は互いに圧迫されて合体します。

この動きにより大きく、より不安定な気泡を作ってしまいます。気泡とミルクの界面に十分な量のタンパク質が付着している場合、タンパク質の弾性ネットワークが形成されているので劇的に気泡同士が合体しにくくなります。

泡の形成と泡の安定性は2つの異なる現象ですが、それらを完全に切り離して考えることはできません。効率的に泡を形成するということは、泡の安定性もよいということです。そうでなければ、泡を作っている間に気泡は次々と壊れてしまいます。

そのため、理想的な泡を作るためには、これらの2つの特徴を組み合わせて適切なバランスを見つけることが大切です。

全乳を使うなら一度加熱してから冷やしてから高温の蒸気を注ぐ

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さてここからが本題。泡の形成と安定性について書いたところで、カプチーノの泡の形成と安定化するための実践的な話を考えてみます。

エスプレッソマシーンが優秀な理由

はぁここまで書いておいて、家で手軽にカプチーノを楽しめる、と期待して読んでくれてい方には本当に申し訳ないですけど、結局、エスプレッソマシーンがベターという結論になってしまいました。。。最近のエスプレッソマシーンは安くて優秀なものが多くなったんですけどね。

カプチーノ用のミルクを泡立てる通常の方法は、エスプレッソマシンには一気に高温の蒸気を送り出すことができるからです。ミルクを急激に温度を上げることができる方法はこれしかありません。中でもスチーム菅が使われているエスプレッソマシーンが良いですね。

ミルクは直前まで冷蔵庫で冷やしておくこと。そして、スチーム菅から熱い蒸気を一気に冷たいミルクに注ぐことで、ミルク温度を一気に約65℃まで温度を上げて泡立てをします。アマゾンで売られているような電動ミルク泡立て器が機械的な攪拌ではここまで急激な温度差を作りだすことができないので、エスプレッソマシーンで高温の蒸気を入れる方法の方が明らかにしっかりとした泡を作ることができます。

蒸気で溶けた脂肪がタンパク質の弾性ネットワークの形成を阻害

ミルクには弾性のあるタンパク質(カゼイン)と球状のタンパク質(ホエイ)で形成されています。これらが泡がつぶれないようにするための弾性ネットワークを形成します。

しかし、全乳にはタンパク質の他に3.7%の脂肪が含まれています。5℃未満の冷たい状態であれば半固体状の乳脂肪球の形状をしているのですが、。ミルクに高温の蒸気を注入したときに、蒸気の温度でこの脂肪が溶けてしまいます。溶けてしまった液体の脂肪は、新しくできた気泡の表面に容易に広がり、タンパク質が膜を張る前に泡の形成を阻害します。

脂肪のこのような効果は、泡形成の初期段階でタンパク質がまだ気泡の表面にしっかりとした弾性のある層を形成する前では特に重要です。だから全乳の少ない無脂肪乳は、全乳よりも簡単に泡立ちます。その代わりに脂肪のない無脂肪乳はクリーミーさにかけた泡を形成するとも言えます。


ミルクへの空気の溶解度は温度の上昇とともに減少するので、温度変化の過程で蒸気の注入が泡の形成と安定化を両立させるのに最適な条件になります。空気は冷たいミルクの中でより多く溶け込むため、泡が形成されやすくなります。


その泡が蒸気の注入によって加熱され、タンパク質が気泡の表面上へ移動しやすくなります。ミルクがさらに加熱されると、タンパク質の構造が変性して気泡の表面にタンパク質の弾性ネットワークが形成され、相互に重合し始めます。この変化により著しく泡の安定性が向上します。


よって最初から温められたミルクは、泡の形成と安定性の両方において、マイナスの影響を与えます。第一に、温度が高い方がより粘性が失われるため、気泡表面から液体が流れやすくなります。第二に、ホットミルク中の空気の溶解度が減少し、泡の形成を阻害します。最後に重要な点として、全乳と部分脱脂乳に含まれる脂肪球は液体であるため、既に説明したように膜の破裂を引き起こします。

一度加熱して脂肪を分解された全乳がいい

これらにより、理論的に泡の形成を考えてみると、加熱処理した後に冷却したミルクが適していることが理解できます。一度加熱することで、脂肪を分解するためです。しかし、超高温で滅菌されたミルクも売られていますが、それはより壊れやすい泡を形成します。これは、非常に高い処理温度(130℃)が、タンパク質の気泡に吸着する能力や気泡を安定化する能力を低下させているためだと考えられます。

全乳を使用する場合は、脂肪が溶けて分解される温度(だいたい60℃~70℃ぐらい)それをきちんと冷やしておくことが必要です。

ミルクの泡立てにはステンレス製の容器を使う

また、泡立てには、ステンレス・スチール製の容器を使用することをオススメします。スチール製は泡立てによって生じてしまった熱の一部を逃がして、冷えたミルクに空気が入り込むのにより長い時間が与えられるので、ミルクが温まりすぎて脂肪球が溶けて液体になるのを防いでくれるからです。つまり、熱が逃げることで、タンパク質の弾性ネットワークの形成が阻害されません。

カプチーノの泡も複雑だけども理解すればお気に入りの泡が手に入る

泡の形成過程の複雑さ、販売されているミルクの種類の豊富さ、そしてカプチーノのレシピの多様さのために泡立ての過程には多くの疑問が未解決のままになっています。

しかし、カプチーノの泡をとっても、その形成と安定化の仕組みは複雑だけでも、物理学と化学の基本的な理論が隠れているわけですね。その理論を理解することで、エスプレッソ好きの人たちは、自分のお気に入りのエスプレッソを独創的で既成概念から飛びだしたまくった新しい飲み物に進化させることができるのかもしれません。

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